営業員の業績評価

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このコラムを書いているのは7月末、つまり暑い時期と言うだけでなく、学生にとっては一番いやな時期、そう試験期間中です。ところで、試験は何のためにあるのでしょうか。試験の表面的目的は評価ですが、本来の目的は、試験勉強を通じその教科の勉強をがんばってもらうことだと思います。

さて、社会人になるとどう評価されるのでしょうか。いろいろな職種がありますが、今回は営業職について考えてみます。営業の評価というときつい「ノルマ」があり、それを達成するために、昼も夜も無く営業車で走り回っているイメージをお持ちの人も多いと思います。ということは「ノルマ≒売上」で評価されていそうです。

ただ、売上以外でも評価できそうな指標はないでしょうか。例えば取引先との接待なども重要な仕事でしょうから、取引先からの評価も評価されていそうです。ただ、売上にせよ、取引先からの評価にせよ、これらは仕事の結果です。がんばったけど結果がでないということは世の中で良くあります。となると、がんばった量や姿勢を評価してもらいたいのではないでしょうか。またこれまで挙げてきた指標はある程度点数化(客観化)できるのですが、世の中点数化できないこともたくさんありそうです。そうなると上司が「えいや」と主観的に評価するということもこれまたありそうです。

以下の表は大阪大学の椎葉先生と私が、2014年2月に日本の製造業の営業部門に対してアンケートを行った結果の一部です。どの項目も、ボーナス査定にきわめて利用されているなら7点、全く利用されていないなら1点で点数をつけてもらっています。そうすると、平均点が一番高いのはやはり売上ですが、その次となると、上司の主観評価となっています。また、顧客関連指標や営業プロセスもそれなりにボーナスに反映されていることが分かります。表にはしていませんが、実は昇進に最も反映されるのは、売上ではなく、上司の主観評価で、顧客関連指標や営業プロセスも売上より強く反映されることがアンケートにより分かっています。

ボーナス査定への利用 平均 標準偏差
1. 売上 5.22 1.64
2. 顧客関連指標(顧客満足度など) 4.60 1.61
3. 営業プロセス(訪問回数など) 4.61 1.61
4. 個人的特性(適正検査の点数など) 3.83 1.78
5. 上司による主観的な評価 4.81 1.37

なぜこうなるのかと何社かにインタビューをしてみると、短期的な売上よりも長期的にもうける仕組みを作れるかどうかがより重要だから、との回答が多く聞かれました。すなわち、無理矢理売り込んで今期の売り上げが良くても、顧客に嫌われて来期以降の売上が激減したら元も子もないわけです。見込み客への訪問回数を増やせば、当然失敗も増えるわけで、そうなると売上が短期的には望めないですが、将来大当たりする可能性もあるわけです。また、部署内や部署間の調整は主観でしか評価しにくいですが、そのおかげで他の営業員や製造部門の仕事が円滑に進むようになれば、目に見えないメリットになるわけで、これも長期的にメリットが大きそうです。

このように考えると、営業職であっても売上のみでなく多面的に評価されている、ということがわかるのでないでしょうか。 ただ、全ての企業が同じように業績指標を使っているのではなく、どれを重視するかは、企業が置かれている状況や戦略によって変わってきます。どんな企業がどの指標を重視しそうか考えてみるのも面白いでしょう。企業のことが分からないのであれば、試験の採点基準がどのような意図で作られていて、どのように勉強して欲しいと教員が思っているか考えてみるのも、面白いのではないでしょうか。

okuda

 

著者: 奥田真也

関連キーワード: 営業、業績評価、ボーナス査定

関連講義: 管理会計1、会計学2