
ファイナンス(Finance)という学問の名前を聞いたとき、皆さんはどういったことを思い浮かべるだろうか?もともとは、金融論と和訳されていた時代もあり、ファイナンスというカタカナに馴染みがない人が多いのではないだろうか?金融論と聞いたときには、銀行の役割に関連する議論を思い出す人が多いと思われるが、ファイナンスと聞いたとき、何を思い浮かべるだろうか?と考えると、多くの人が描く一致したイメージはあまりないのではないだろうか?
経済学部・経営学部で、ファイナンスを学ぶ前(ないしは入門を学んでいる)段階の人に聞いてみると、「ファイナンス=お金儲けを考える分野」というイメージは強くあると聞くこともあった。一方で、(理工系のファイナンス科目を履修する学生に特に多い意見であるが、)数学の知識を使って、株価や様々な新しい金融商品についての数式を解説する授業だという意見を聞くことも多い。社会人経験者に聞くと、「ファイナンス」は社会に出てこそ生きる学問で、株式投資などの実践を行うためには、大学で扱う教科書などを学習するのではなく、むしろ投資啓蒙書を読み込んで投資経験を積んだ方がいいという考えもあるようだ。「ファイナンス」という言葉に関しては、人々によって様々なイメージを持つので、言葉のイメージが一人歩きすることが多い。結果として、色々な考えを持った人が話し合うと、違うイメージの下で議論して、お互いに相手に対して、誤解を与えやすい印象がある。
ここでは、イメージを離れて、「ファイナンス」を学問として考えれば、どのような分野なのかということを少し考えてみよう。「ファイナンス」を学習するためには、(数学が得意でない人からすると悩ましい課題であるものの、)数式を駆使したモデル分析を提示する研究や、データを用いた分析を行う研究に基づいた知識を習得する必要がある。勿論、「ファイナンスを教えるために、どのように簡単に教えるか?」といったことを考えた数多くの教科書も増えているので、数式を最小限にとどめて説明されることが多い。しかしながら、分析対象となる現象に関する数理モデルがあり、それが現実にどうかというデータ分析が行われているという意味では、手法的には理工系の学問に近い部分もある。一方で、海外のビジネスマンなどがビジネススクールで学ぶ際は現実の企業や金融市場を巡る問題に対して、どのように知識を活用するかという視点を重視しており、数学的な理解だけをするだけでは応用できないという問題もある。
このように考えると、「ファイナンス」とは、非常に入り口が広い一方で、中々掴みどころの難しい分野であるとも言える。将来の年金運用なども金融商品ベースで行うように、個人を巡る環境が変化している現状では、それぞれが自分の必要性を考えながら、ファイナンスの知識を上手く習得、活用していくことが重要であると考えられる。
ファイナンスに関しては、学問としてのみとられるのではなく、身近なテーマにも応用できるという考えもある。実際、ファイナンスの教科書の多くは、お金に関する内容を手広く解説することが多い。多くの人が直面する課題のなかで、たとえばまとまった資産がある場合、預金をするか、債券を買うか、それとも株式で運用するのか?家を買うのか、それとも借りるのか?保険に入った方が得なのか?入る場合いくらを掛け金とするのか?などの個人の判断に直結するテーマを扱うことも多い。身近な生活の中で、お金にかかわる判断を知らず知らずに行っているのが多くの現状である。
また、ビジネスに携わった場合でも、ファイナンスの勉強は活用されることが多い。たとえば会社として工場に投資すべきかどうか?その資金はどこから調達すべきかといった判断をもとめられることがある。銀行・証券会社・保険などのような金融を生業とする金融機関に就職することことがあれば、いやおうなくファイナンスの知識を期待されることも多いだろう。
著者:渡辺直樹
関連キーワード:ファイナンス
関連講義名:ファイナンス分析、先物・オプション入門