【知の最前線(3)】 福祉国家から福祉世界へ

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名古屋市立大学経済学部は知の最前線を切り開く研究者が授業を担当します。
このコンテンツは経済学部/経済学研究科パンフレットに掲載された『知の最前線』を再構成して掲載しています。
第3回目は藤田菜々子先生です。

Q.先生はどんなことを研究なさっていますか。
A.経済学史と制度経済学が専攻分野です。経済学史では、とくに1974年に「ノーベル経済学賞」を受賞したスウェーデン人の経済学者グンナー・ミュルダールの学説について探究してきました。制度経済学では、経済は政治や社会と不可分であると考えます。近年は、政治学者と共同研究を進めており、現代の経済危機と政策転換について、主に北欧諸国の状況を分析しています。

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Q.先生がその研究テーマを選んだきかっけは何ですか?
A.ミュルダールの経済学説の研究を進めようと思ったのは、福祉に関する経済思想が独特で興味深かったからです。スウェーデンは「高福祉・高負担」で知られますが、その歴史的起源に彼は深く関与しています。福祉と経済の関係を問うことは、現代においてますます重要になってきていますし、北欧諸国の理解にも欠かせません。

Q.ご研究を通じて先生が発見なさったことを教えて頂けますか?
A.2010年に『ミュルダールの経済学――福祉国家から福祉世界へ』という研究書を出版しました。ミュルダールは福祉国家推進論者でしたが、「福祉世界」の可能性についても論じました。福祉国家は本質的に国民主義的性質をもつという彼の批判的指摘は、現代のグローバル化や地域経済統合を展望するのに役立ちます。福祉国家研究から地域や世界のガヴァナンスを考察する必要。それが研究を通じて得た発見であり、新たな課題でもあります。

Q.研究を進めるなかでいろいろ大変なこともあるのでしょうか?
A.なんといっても、膨大な文献を読解しなければなりません。ときには、海外に一次史料の調査にも行きます。原典に当たることが大切で、自分なりの分析視点をもたなければ、解釈や研究成果が生まれません。共同研究もありますが、結局、論文は一人で書くので、孤独で静かな長期戦を強いられます。心身ともに持久力がないとダメですね。それと、国際会議では英語力も必要です。

Q.ご研究の分野は私たちの生活とどう関わっているのでしょうか?
A.ミュルダールの経済思想や北欧諸国の経験は、今日の日本に大きな示唆を与えるでしょう。スウェーデンは少子化問題を1930年に経験済みです。ミュルダールは、母親のワーク・ライフ・バランス問題を先駆的に論じるとともに、福祉とはコストではなく人的資本への投資であるとして、幼若年層への福祉の充実を求めました。北欧諸国は福祉だけでなく、経済も比較的好調に推移してきており、「北欧モデル」から学ぶべきことは多いです。

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藤田 菜々子
FUJITA Nanako

名古屋市立大学大学院
経済学研究科 准教授
博士(経済学)